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叩けシンプルの杖

コーポレートファイナンス読書ログ:第2章

概要

企業の財務上の目的について。

企業は、純現在価値が正の投資プロジェクトに対して投資をすることを目的とする。 純現在価値が正であるということは、投資の収益率が資本の機会費用よりも高いことを意味する。

この目的を達成することで、株主の富を最大化することができ、すべての株主を満足させることができる。

この目的は、「利益の最大化」よりも適切である。

また、経営者の利害と株主の利害を一致させるいくつかの仕組みにより、株主価値を増大させるよう経営陣が努力をするようになる。

株主価値を増大させることは、従業員や顧客、地域社会を犠牲にすることではなく、倫理を無視することで会社が被るデメリットの方が多い。

概要

  • ファイナンスの基本的なルール
  • 現在価値と純現在価値
  • リスクと現在価値、及び収益率
  • 投資のための意思決定ルール
  • 株主の投資主義の違いどう対応するか
  • 「利益の最大化」を企業の目的にするのは不適切
  • 経営者と株主の利害を一致させる仕組み
  • 経営者が株主利益を突き詰めても、社会的な倫理を無視することには繋がりづらい

ファイナンスの基本的なルール

以下の2つがファイナンスの基本的なルール。

  • 今日の1ドルは明日の1ドルより価値がある
  • 安全なドルはリスクのあるドルより価値がある

お金は証券に投資することで金利が得られるため、明日1ドルを得られるよりも、今日1ドルを得られる方が価値がある。

また、同じ収益が得られるのであれば、より安全な投資方法の方が価値が高い。

現在価値と純現在価値

あるプロジェクトへの投資で1年後得られる将来価値C1が分かっている場合、現在価値PVを算出することができる。

類似した証券投資の収益率(金利)をrとすると、以下の数式で求められる。

 \displaystyle
PV = \frac{C_1}{1 + r}

将来得られるキャッシュフローを、収益率で割り引くと、現在価値が得られる。 そのプロジェクトが現在価値PVを持っているとし、rと同等の収益率で利益を生み出した場合、1年後、その価値は将来価値C1と同等になる計算である。

収益率rは資本の機会費用とも呼ばれる。このプロジェクトに投資せず、類似した証券に投資していた場合に得られていたはずの収益だからである。

現在価値PVに対して、初期投資額C0を差し引いた分を純現在価値NPVと呼ぶ。純現在価値NPVは以下の数式で求められる。

 \displaystyle
NPV = C_0 + \frac{C_1}{1 + r}

ここでC0は投資であるため負の値である。

純現在価値が正の値である時、その投資は費用を上回る価値を現時点で持っていることを意味する。

すなわち、その投資により富が増大する。

リスクと現在価値、及び収益率

純現在価値の計算で用いる収益率rは、同等のリスクを持つ証券投資の平均収益率を用いる。

一般的にはリスクが高い証券の方が収益率rは高い値であるため、リスクの高いプロジェクトはそれ相応の収益率が求められる。

同等のリスク、同等の収益率であれば、株などの証券に投資した方が良いという判断になってしまう。

投資のための意思決定ルール

上記より、プロジェクトへの投資には以下の2つの意思決定ルールが存在する。

  • 純現在価値が正の投資は受け入れる
  • 資本の機会費用を上回る収益率を提供する投資は受け入れる

株主の投資主義の違いどう対応するか

株主にはリスクに寛容である短期投資主義者(キリギリスタイプ)と、リスク回避的な長期投資主義者(アリタイプ)がいる。

純現在価値を正にする投資を行うのは、どちらのタイプの株主も満足させることができる。

会社が純現在価値を正にする投資を行うということは、投資開始段階で、投資金額よりも得られる価値の方が上回っている。 この投資をすることで会社の市場価値、すなわち株主の富を増大させることができる。

また、良好に機能する資本市場があることで、株主は将来の利益を当てにした借り入れを行うことができ、最適なパターンで収益と消費の調整ができる。

良好に機能する資本市場では、借り入れと貸し出しの金利(≒証券の収益率)がほぼ同等であるため、借り入れを行うことで、消費を先に行うことができる(プロジェクトによって生み出される収益率は借り入れの金利で相殺される)。

キリギリスタイプの株主は収益を見越してすぐに借り入れを行い消費をすることで、実質的に投資プロジェクトで生み出される純現在価値と同等の消費をすぐに行うことができる。

アリタイプの株主は、最終的に長期的に収益率を加味した将来価値と同等の消費を行える。この将来価値は、純現在価値分、価値が増大された値となっている。

よって、どちらのタイプの株主も、純経済価値が正の投資を行う経営方針には合意ができる。

「利益の最大化」を企業の目的にするのは不適切

「純現在価値が正の投資を行う」という目的ではなく「利益の最大化」を企業の目的に据えるのは不適切である。

「利益の最大化」という目標を掲げると、以下のような不明瞭な点が生まれる。

  • どの年の利益を最大化するのか。今の利益を取って、将来の利益を減らすべきか
  • 配当を減らして将来の利益を最大化するべきか。利益率が悪くても将来の利益が増えれば良いのか
  • 会計士により「利益」の計算方法が違い、最大化方法が異なる場合がある

経営者と株主の利害を一致させる仕組み

株主にとっては、「純現在価値が正の投資を行う」ことが利益をもたらすが、経営者にとってはそうではない可能性がある。

しかし、経営者と株主の利害を一致させる仕組みがあれば、経営者が「純現在価値が正の投資を行う」ことを努力するようになる。

具体的には、以下のような仕組みがある。

  • 経営者の報酬(ボーナス、ストックオプション)は株価と連動している
  • 経営者は株主の代表である取締役会に監視されており、常に交代の可能性がある

経営者が株主利益を突き詰めても、社会的な倫理倫理を無視することには繋がりづらい

経営者が株主利益を突き詰めるというと悪いイメージがあるが、顧客をないがしろにする、従業員を虐げるなど、社会的な倫理倫理を無視することには繋がりづらい。

株主利益を追求することは、企業の収益力を高めることに繋がり、収益力の高い企業は、顧客や従業員の満足度を高めることができる。

また、悪事は企業の評判を落とし、企業の収益性を悪化させることになりうるため、その事実がストッパーになる。

コーポレート・ファイナンス 第10版 上

コーポレート・ファイナンス 第10版 上

  • 作者: リチャード・A・ブリーリー,スチュワート・C・マイヤーズ,フランクリン・アレン,藤井眞理子,國枝繁樹
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