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【不動産エリア分析】駅徒歩10分以内エリアのポテンシャルを測る

今回は、事業として不動産を調達していく上で欠かせないエリア分析の方法をご紹介します。 具体例として、駅徒歩10分エリアのポテンシャルを測り、どの駅近辺の物件を獲得するべきかの判断をするケースを想定します。

不動産エリア分析とは

不動産を調達する上で、どのエリアの物件を獲得するかを決めるのがエリア分析です。

不動産は立地が最重要といっても過言ではなく、立地は家具や内装と違い、失敗した場合取り返しがつきません。

立地を決めるという点から、不動産のエリア分析は、小売業や飲食業の出店計画に近い性質を持ちます。 そのため、小売業等のエリアマーケティングで利用されている商圏分析手法を活用することで、不動産のエリア分析を行うことができます。

商圏分析

商圏分析とは、地図情報と統計情報を用いて、店舗予定地の集客範囲(商圏)のポテンシャルを測る方法です。商圏の広さは業態によって変わります。

www.esrij.com

この商圏分析を駅自体に適用し、駅徒歩圏内を駅の商圏であること考えることで、駅自体の商圏分析を行うことができます。

首都圏においては主要な移動手段は電車であるため、駅自体のポテンシャルが、駅徒歩圏内に存在する物件の需要に大きな影響を与えます。 そのため、この結果を元に、どの駅近辺の物件を獲得すべきかの判断に用いることができます。

商圏分析ツール

日本には様々な商圏分析ツールが存在しますが、まずは日本政府によって提供されているjSTAP MAPをおすすめします。

無料かつブラウザ上で利用することができ、多くの商圏分析ツールが備えている政府統計の地図マッピングを標準で行うことができるためです。*1

また、UIもよくできており、チュートリアルのツアーも一通り実装されているため、悩まずに利用することができます。

登録方法はこちらを、基本的な利用方法はログイン後のチュートリアルをご参照ください。

www.e-stat.go.jp

jSTAT MAPの応用

jSTAT MAPを応用することで、都内全ての駅の徒歩10分以内の人口をまとめて可視化することができます。

手順は以下の通りです。

  • 都内全駅の緯度経度情報の取得とインポート
  • 徒歩10分エリアの作成
  • 統計グラフの作成
  • レポートのダウンロード

都内全駅の緯度経度情報の取得

jSTAT MAPは緯度経度情報をまとめてインポートすることで、地図上にまとめてピンをプロットすることができます。 まずはインポートするための駅ごとの緯度経度情報を入手しましょう。*2

こちらの駅データ.jpというサイトに会員登録することで、無料で駅の緯度経度情報を取得することができます。

www.ekidata.jp

緯度経度情報をjSTAT MAP指定のフォーマットに変換してインポートした結果がこちらです。

f:id:shoby:20190905011911p:plain
プロット結果

徒歩10分エリアの作成

不動産業界では、徒歩1分80mとして計算されているため、それに則って徒歩10分800mの作成をします。

プロットグループ指定の同心円を選ぶことで、駅を中心とした800mの円形エリアが作成されます。

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プロットグループ指定の同心円

以下が実際に作成したエリアです。

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駅徒歩10分エリア

統計グラフ

エリアを作成すると、そのエリアに対して任意の統計グラフを作成することができます。 こちらのグラフは、画面内に表示されているエリアのみ対象になりますのでご注意ください。

今回は、2015年国勢調査の町丁・字単位人口を元に、グラフを作成します。

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国勢調査

集計単位を作成したエリアにし、按分指定することで、該当エリアに含まれる町丁・字の人口を、面積で按分し、エリア内人口として計算してくれます。

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エリア指定(按分)

実際に作成された統計グラフは以下のようになります。

f:id:shoby:20190905013502p:plain
人口統計グラフ

レポートのダウンロード

作成した統計グラフのデータは、Excel形式のレポートとしてダウンロードすることができます。

このように、jSTAT MAP上で駅単位の商圏分析を行うことができます。

不動産エリア分析の結果の活用方法

不動産エリア分析を行うことで、ターゲット属性の人口が多い駅を特定するなど、実際のエリア選定に役立つ情報を得ることができます。

これらのエリア情報を元に、エリアの意思決定が行えれば、エリア分析フェーズから、該当エリア内での個別物件分析フェーズに移ることができます。

まとめ

不動産の獲得には立地が重要になるため、エリアの分析は欠かせません。 小売業等で用いられる商圏分析のアプローチを用いることで、駅ごとの徒歩圏内エリアのポテンシャルを測ることができます。 これらの情報を活用し、エリアの選定を行った後に、個別物件の分析に移ります。

*1:多くの商圏分析ツールは、地図上に政府統計+αの情報をマッピングできるだけなので、それを無料で提供しているのは太っ腹です。

*2:緯度経度ではなく、住所名から指定することもできますが、そちらは1ファイル辺り500件、1日辺り5000件の制限があります。おそらくGoogle MapのGeo Coding APIを利用しているので、その費用低減対策だと思われます。