不動産投資の分析において、エリア傾向を図る一つの指標が昼間人口です。 昼間人口を夜間人口と比較することで、そのエリアが通勤・通学先であるか、ベッドタウンかを判定することができ、 どのような物件が求められているかを推測することができます。
このように昼間人口は便利なデータですが、政府統計では市区町村までの粒度のデータしか提供されておらず、 細かい粒度での分析を行うことができません。
今回は、市区町村より細かい粒度の昼間人口を推定する方法をご紹介します。
かつて提供されていた市区町村より細かい昼間人口データ
上述したように現在は昼間人口は市区町村単位でしか提供されていませんが、 以前は統計局から500m単位の地域メッシュにより昼間人口が提供されていました。
こちらのリンクによる地域メッシュ統計は、国勢調査と事業所・企業統計調査の結果を同じメッシュ区画で突合することにより、その地域における昼間人口を推計するデータです。 現在最新のデータは平成12年国勢調査,13年事業所・企業統計調査を組み合わせたものであり、冊子やDVDでしか提供されておらず、統計局HPからデジタルデータで入手することはできません。
現在は事業所・企業統計調査が経済センサス調査と名前を変え、リンクによる地域メッシュ統計は提供されなくなってしまいましたが、こちらの地域メッシュデータの算出方法を真似ることで、昼間人口に近い性質のデータを作ることができます。
リンクによる地域メッシュ統計の昼間人口計算ロジック
最も新しいリンクによる地域メッシュの昼間人口計算ロジックは以下の通りです。
昼間人口 = 国勢調査 15歳以上非労働力人口 - 国勢調査 15歳以上通学者数 + 国勢調査 未就学者数 + 国勢調査 完全失業者数 + 国勢調査 農林水産業就業者数 + 事業所・企業統計調査 第2次産業事業所従業者数 + 事業所・企業統計調査 第3次産業事業所従業者数 + 通学地域メッシュ別生徒・学生数
各構成要素について、総務省によるjSTAT MAP(地図で見る統計)でのメッシュデータ入手可否については以下の通りです。
統計名 | 入手可否 | 備考 |
---|---|---|
国勢調査 15歳以上非労働力人口 | △ | 国勢調査 4次メッシュ「人口総数」ー「当地に常住する15歳以上就業者・通学者 就業者数」で「15歳以上非労働力人口」+「完全失業者数」 |
国勢調査 15歳以上通学者数 | ○ | 国勢調査 4次メッシュ「当地に常住する15歳以上就業者・通学者 通学者数」 |
国勢調査 完全失業者数 | △ | 上述 |
国勢調査 農林水産業就業者数 | ○ | 経済センサス基礎調査 小地域「従業者数-A〜B 農林漁業」 |
事業所・企業統計調査 第2次産業事業所従業者数 | ○ | 経済センサス基礎調査 小地域「従業者数-C〜S 非農林漁業」 |
通学地域メッシュ別生徒・学生数 | × |
上の表の通り、学生の流出数は分かりますが、流入数が分かりません。 そのため、学生街は別途判断することを前提とし、通学による流出入を0と置いて、学生除外昼間人口を求めます。
計算式は以下の通りです。
学生除外昼間人口 = 国勢調査 人口総数 - 国勢調査 当地に常住する15歳以上就業者・通学者 就業者数 + 経済センサス基礎調査 従業者数-総数(A〜S全産業)
これにより、通勤による流出入を把握することができます。
この学生除外昼間人口を求める際には、4次メッシュ(500mメッシュ)と小地域(町丁・大字)のデータを突合させる必要があるため、 エリアを指定し、面積での按分を行う必要があります。
エリア単位の集計は以下の記事をご覧ください。
活用方法
学生除外昼間人口を元に、昼夜間人口比を求めることで、地域の人口移動の傾向と、求められる物件の傾向を把握することができます。
一般的に昼夜間人口比が高いエリアは勤務地として職住近接型の物件が求められ、 昼夜間人口比が低いエリアはベッドタウンとしてファミリー向けの物件が求められると考えられます。
まとめ
複数の政府統計データをリンクさせて用いることで、市区町村単位よりも細かい地域ごとの昼間人口を推計することができます。 具体的には国勢調査と経済センサス調査を用いることで、通勤による人口増減に着目した学生除外昼間人口を求めることができます。
これにより、地域ごとの人口移動の傾向を把握することができ、求められる物件の傾向を把握することができます。