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政府統計から市区町村ごとの空室率を出す

不動産の分析において重要なのが空室率です。 空室率を見ることで、そのエリアの不動産の需給バランスが適切かどうかを判定することができます。

今回は、住宅・土地統計調査という政府の統計データから、市区町村ごとの空室率を出す方法をご紹介します。

住宅・土地統計調査について

住宅・土地統計調査とは、総務省統計局が5年ごとに行なっている住宅・土地に関する調査です。

2019年8月21日現在、平成30年の調査はまだ集計で結果がすべて公表されていないため、今回は平成25年の調査を元に話を進めます。

www.stat.go.jp

こちらは、居住者がいる場合は居住者に尋ね、居ない場合は調査員が外観から判定することで、調査が行われています。 つまり、最終的に空き家かどうかの確認は調査員の判断に委ねられていることになります。

www.stat.go.jp

また、こちらの調査では独特な用語を用いていますので、事前に用語の定義を確認しておくと集計を行いやすいです。

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平成25年住宅・土地統計調査 用語の解説より引用

アパートやマンション等はそれぞれの一室ごとが「住宅」に該当します。

空室率の計算方法

調査結果より、総住宅数のうち、空き住宅数の割合を出すことで、市区町村ごとの空室率を出すことができます。 ただし、そのままだと建設中の住宅や別荘も計算に含まれてしまうため、適切に条件を絞り込むことが必要です。

住宅・土地統計調査は様々な区分で建物を分類しているため、どの分類をもって絞り込むのかは難しいですが、私がある程度妥当性があると考えた条件を共有します。

総物件数の条件

  • 共同住宅のみ(アパート・マンション)
  • 構造は木造以外(鉄筋・鉄筋コンクリート・鉄骨・その他)
  • 居住者がいる借家 or 賃貸用の空き家

空き住宅の条件

  • 共同住宅のみ(アパート・マンション)
  • 構造は木造以外(鉄筋・鉄筋コンクリート・鉄骨・その他)
  • 賃貸用の空き家

上記の条件を用いることで、極端な条件を除外し、一般的に不動産市場の傾向を表すと考えられる賃貸向けアパート・マンションの空室率を求めることができると考えられます。

空室率計算のための統計表

前述した条件での集計には、以下の統計表を利用します。

総物件数

住宅・土地統計調査 平成25年住宅・土地統計調査 確報集計18 住宅の所有の関係(2区分),構造(5区分),建築の時期(7区分),建て方(4区分),階数(4区分)別住宅数―市区 | 統計表・グラフ表示 | 政府統計の総合窓口

空き住宅

住宅・土地統計調査 平成25年住宅・土地統計調査 確報集計65 住宅の建て方(4区分),構造(2区分)別賃貸用の空き家数―市区町村 | 統計表・グラフ表示 | 政府統計の総合窓口

表示項目選択でフィルタリング条件を設定でき、レイアウト設定でピボットテーブル相当のことができます。

これにより、エリアごとの空室率を計算することができます。 具体例を出すと、東京23区全体の空室率が14.27%になります。

空室率データに関する注意点

政府統計を用いることで出すことのできる空室率にはいくつか注意が必要な点があります。

まず一つは5年周期でしかデータが得られないことです。 現在利用できるデータは6年前のデータになりますが、6年も経てばエリアの人口動態なども大きく変化していると考えられます。

また、求めた空室率が、不動産市場に流通する一般的な建物の空室率とは異なる可能性があります。 実際に、東京23区全体の空室率が14.27%というのはかなり高い値になっています。 推測ですが、住宅・土地統計調査ではランダムに選ばれた物件が調査対象になるため、そもそも不動産市場には流通しないような客付の難しい物件*1が集計に含まれており、結果が一般的な不動産市場の傾向を表していないという可能性があります。

さらに、空室かどうかの調査は調査員による外観の確認頼みなところも注意が必要です。 最近では空室物件でもレースカーテン等を設置するケースなども多く、外観から空室であることを正しく判定できていない場合もあると考えられます。

上記のような注意点を考慮に入れつつ、あくまで参考情報として活用するのが良さそうです。

まとめ

住宅・土地統計調査を用いることで、エリアごとの空室率を求めることができます。

ただし、更新頻度が5年と低く、不動産市場にある一般的な物件とは乖離がある可能性があり、空室かどうかは調査員による外観チェックにより行われているという点に注意が必要です。

*1:古すぎる物件など